こんにちは。FORTUNA GROUP株式会社 代表取締役の村田弘子です。
日本は世界に冠たる「長寿企業大国」です。しかし今、その誇るべきレガシーが静かなる危機に瀕しています。
「後継者がいない」「子供が継ぎたがらない」「そもそも子供が結婚していない」——。
日々、私の元には多くの経営者様から切実なご相談が寄せられます。
かつて当たり前だった「親族内承継」は、今や当たり前ではありません。データによれば、同族承継の割合は2017年の39.4%から、2023年には33.1%へと急激に低下し、初めて従業員承継(35.5%)を下回りました。
多くの専門家は「M&Aや第三者承継も視野に」と言います。もちろん、それも一つの選択肢です。しかし、私はあえて問いかけたいと思います。
「あなたは本当に、愛する会社と家業を、家族の手から離してしまってよいのですか?」
本記事では、これまで数多くのファミリービジネスの成婚と承継を支援してきた経験、そして私自身の学会での研究成果に基づき、「人的資本(結婚・採用)」と「対話」を軸にした、新しい事業承継の戦略について包括的に解説します。
これは単なる婚活のすすめではありません。あなたの会社を100年企業にするための、経営戦略の書です。
第1章:なぜ今、事業承継が失敗するのか?——「沈黙」という最大のリスク
まず、私たちが直面している問題の本質を直視しましょう。
なぜ、親族内承継が進まないのでしょうか?
少子化? 産業構造の変化? もちろんそれもあります。しかし、私の研究で明らかになった最大の要因は、もっと心理的な、家族間の「コミュニケーションの断絶」にあります。
1. 「感情的な行き詰まり(Emotional Deadlock)」の罠
私が実施した調査では、実に70%以上の経営者とその家族が、承継や結婚に関する「本音」を互いに確認できていないことがわかりました。
親である経営者はこう考えます。
「子供には子供の人生がある。無理に継がせるのは可哀想だ。結婚についても口出しして嫌われたくない」
一方、後継者候補である子供はこう考えます。
「親が何も言ってこない。期待されていないのかもしれない。自分から『継ぎたい』なんて言い出せない」
この、互いを思いやるがゆえの「沈黙」こそが、事業承継を阻む最大の壁です。私はこれを「エモーショナル・デッドロック(感情的な行き詰まり)」と名付けました。

2. 伝統的システムの崩壊
かつての日本には、「お見合い」や「家督相続」という社会的なシステムがあり、それが強制的に対話の機会を作っていました。しかし、恋愛結婚が90%を超え、個人の自由が尊重される現代において、そのシステムは機能していません。
その結果、重要な会話が先送りされ、親は70代、子は40代独身のまま、「決断の期限」を迎えてしまうのです。これは経営における最大のリスクマネジメントの欠如と言わざるを得ません。
第2章:結婚を「プライベート」で終わらせない—経営戦略としての「家族形成」
このデッドロックを打破するために必要なのは、視点の転換です。
後継者の結婚を「個人のプライベートな問題」として放置するのではなく、「企業の存続に関わる人的資本の確保(BCP対策)」として捉え直すのです。
1. 配偶者は「最強の外部人材」である
学術的な研究においても、後継者の配偶者選びは、企業のパフォーマンスに戦略的な影響を与えることが示されています。
結婚とは、他家から新しい文化、スキル、ネットワークを持った人材を、経営陣(ファミリー)に迎え入れる「M&A」のようなものです。
特に、創業家の理念や熱量を次世代に伝える上で、配偶者の役割は極めて重要です。私自身の経験をお話ししましょう。私は会計事務所の二代目妻として嫁ぎました。義父である創業者からは「男の子を産んで公認会計士にしろ」という、今ならパワハラとも取れる猛烈なプレッシャーを受けました。
当時は反発もしましたが、義父の死後、私は気づいたのです。彼は単に跡取りが欲しかったのではありません。「顧客企業の永続を支援するためには、まず自らの組織が永続しなければならない」という、プロフェッショナルとしての凄まじい執念を持っていたのです。
その「創業の精神」を、血の繋がった息子以上に深く理解し、再解釈し、現代に合わせてビジネスを進化させたのは、実は「外から来た」私でした。
配偶者は、創業家のDNAを守りつつ、新しい風を吹き込むイノベーターになり得るのです。
2. 「婿養子(Mukoyoshi)」という勝ち筋
日本には世界に誇るべき「婿養子」のシステムがあります。スズキ、鹿島建設など、日本の長寿企業の多くが、優秀な婿養子を迎えることで繁栄してきました。
データを見ても、婿養子を希望する経営者は減っておらず、一定のニーズが存在します。しかし、現代のマッチングアプリや結婚相談所は「家業」という特殊要因に対応できておらず、ミスマッチが起きています。
「娘しかいないからM&Aしかない」と諦める前に、優秀なビジネスマンを娘婿として迎え、経営を任せる。これは、所有と経営を分離しつつ、ファミリーの支配権を維持する極めて合理的なガバナンス手法です。

第3章:誰に継がせるか?——多様化する承継のカタチ
親族内承継の形も、時代とともに進化しています。「長男絶対主義」は過去のものです。
1. 女性後継者の台頭
最新のデータでは、長男や長女への承継が減少する一方で、「長女以外の娘」「息子の妻」などへの承継が増加しています。
これは、生まれ順や性別に関わらず、「意欲と能力のある者が継ぐ」という実力主義へのシフトを示唆しています。
女性はコミュニケーション能力が高く、しなやかなリーダーシップを発揮することが多々あります。私のクライアントでも、娘さんが継いだことで社内の風通しが良くなり、業績が向上した事例は枚挙に暇がありません。
2. 「事業承継結婚」というソリューション
しかし、後継者が独身のままでは、その次の世代へのバトンが途切れてしまいます。そこで私が提唱し、実践しているのが「事業承継結婚®」です。
これは、家業の財務状況や将来性を(守秘義務の下で)開示した上で、その価値観に共感し、共に経営を支える覚悟のあるパートナーを見つける仕組みです。
「条件」だけで選ぶのではなく、「家業への理解」と「ファミリーとしての覚悟」を共有できる相手と出会うこと。これが、ガバナンスの安定に直結します。
第4章:実践! 90歳から逆算する「世代間ライフプランニング」
では、具体的にどう動けばよいのでしょうか。
私がコンサルティングの現場で必ず行っていただくのが、「統合的ライフプランニング・ワークシート」を用いたバックキャスティング(逆算思考)です。
1. 未来の「あるべき姿」を可視化する
まず、ご自身の90歳の姿を想像してください。
「引退して、妻と世界旅行をしている」
「孫が会社に入社し、それを見届けている」
「地域の顔役として尊敬されている」
——それがあなたの「成功(生きがい)」のイメージです。
2. 時間軸を巻き戻す
その90歳の姿を実現するためには、80歳の時にどうなっていなければなりませんか?
さらに、70歳の時には? 60歳の時には?
ある経営者様とのセッション事例をご紹介します。
彼は「死ぬまで現役」と考えていました。しかし、ワークを通じて「孫と一緒に会社にいるのが一番の幸せだ」と気づきました。
そこから逆算すると、衝撃の事実に直面したのです。
「孫が入社するには、今30代の息子がすぐに結婚しなければ間に合わない!」
「そして、私が70歳で引退しなければ、息子に経営を教える期間がない!」
この瞬間、彼の意識は劇的に変わりました。「結婚は息子の自由」という傍観者の立場から、「事業承継のために、親として全力で環境を整える」という当事者の立場へとシフトしたのです。
3. リスクを共有し、行動に移す
このワークシートの目的は、「何もしないこと(Inaction)のリスク」を可視化することです。
「結婚について話すのが気まずい」という短期的な感情リスクと、「家業が途絶え、従業員や取引先に迷惑をかける」という長期的な経営リスク。どちらが重大かは明白です。
この認識を共有することで、初めて親子間の建設的な対話(ダイアログ)が可能になります。実際、このワークショップを受けた経営者の70%が、子供との対話を開始することに成功しています。
第5章:家庭内教育(Home Education)の再定義
最後に、これから後継者を育てる、あるいは孫世代を育てる方へ。「家庭」こそが最強の経営塾です。
1. 食卓での「ファミリーコンペ」
かつては、祖父母と同居し、店と家が一体となっている中で、子供は自然と商売の息吹を学んでいました。しかし、職住分離が進んだ現代では、意識的な教育が必要です。
私が推奨するのは、食卓での「ファミリーコンペ」です。
ニュースや自社の商品について、「お前ならどうする?」「社長ならどう判断する?」と問いかけるのです。正解・不正解ではなく、自分の頭で考え、意見を言う訓練。これを幼少期から20年続ければ、後継者としてのマインドセットは自然と醸成されます。
2. 多様性と公平性
「長男だから継ぐのが当たり前」という時代ではありません。すべての子供たちに等しく機会を与え、その中から最も適した人物が継ぐ。あるいは、兄弟でチームを組んで継ぐ。
家庭内でそのような「公平な競争」と「相互のリスペクト」を育てることが、将来の相続争いを防ぎ、強固な経営チームを作る土台となります。
あなたの会社の「次の100年」のために
事業承継は、税金や株式だけの問題ではありません。それは「想い」と「人」をつなぐ、壮大なプロジェクトです。
M&Aで会社を売ることは、数字の上では合理的かもしれません。しかし、創業者が命を削って築き上げた「のれん」や、地域との絆、そして家族の歴史は、誰が守るのでしょうか。
「家族の力」を信じてください。
適切なパートナー(配偶者)を得て、腹を割って対話し、共通の未来図を描くことができれば、ファミリービジネスはもっと強く、もっとしなやかになれます。
私たちFORTUNA GROUPは、単なるマッチング業者ではありません。あなたの会社の「人的資本」と「ガバナンス」を再構築し、次の100年を創るパートナーです。
「後継者の結婚」も「親子の対話」も、すべては経営戦略です。
手遅れになる前に、まずは一度、私たちとお話ししませんか?
あなたのファミリーの「新しい物語」を、ここから始めましょう。
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事業承継・後継者の結婚に関するご相談は、FORTUNA GROUPまでお問い合わせください。
経営者様個別の事情に合わせ、守秘義務を遵守した上で最適なプランをご提案いたします。
