~「うちの会社、大丈夫?」 後継者問題、揉める前に対策を!~
あなたの会社は大丈夫ですか?
長年地域に愛されてきた老舗旅館、街の活気を支える活魚問屋、最新技術で業界をリードする町工場…。
こうしたファミリービジネスの経営者の多くが、事業承継という大きな壁に直面しています。
「息子はまだ若いから」「娘は結婚して姓も変わるし」「適切な後継者がいない…」
そう思っているうちに、時間だけが過ぎてしまい、結局、誰も事業を継げないまま廃業…
あるいは、親族間で後継者争いが勃発し、泥沼の裁判劇に発展…
そんな悲劇も、決して他人事ではありません。
事業承継は、単なる経営者の交代ではありません。
会社の歴史、顧客や従業員との信頼関係、そして一族の想いを次の世代に引き継ぐ、
一大事業なのです。
今回は、ファミリービジネスならではの難しさに触れつつ、円滑な事業承継を実現するための6つのステップを、具体的な事例を交えながら解説していきます。
「うちは大丈夫」と安穏としていないで、早めの準備と適切な対策を始めましょう。
それが、会社を守るだけでなく、家族の絆を守ることにも繋がるのです。
目次
なぜファミリービジネスの事業承継は難しいのか?
ファミリービジネスの事業承継が難しいと言われる理由は、大きく2つあります。
- 感情が優先されやすい:
- 長年、家族ぐるみで築き上げてきた歴史や想いが強いだけに、事業に対する考え方も多様化しやすく、感情的な対立が生じやすい
- 特に、後継者の選定や処遇、経営方針などを巡って、親族間で意見が衝突することが多い
- 経営と家族、両方のバランスを取るのが難しい:
- 事業承継は、あくまでも「会社」という組織を存続・発展させるためのもの
- しかし、ファミリービジネスの場合、「家族の幸せ」や「親の期待」といった要素も絡み合い、冷静な判断が難しくなりがち
例えば、こんなケースを考えてみましょう。
創業社長は、長男を後継者にと考えていましたが、長男は全く違う分野に興味があり、事業を継ぐ意思がありません。
一方、長女は会社で働き、経営にも意欲を見せていますが、創業社長は「女に社長は無理」という旧来の考えから、長女を後継者候補として考えていません。
このような場合、家族会議を開いても、感情的な対立ばかりが先立ち、建設的な議論は難しいでしょう。
結果として、事業承継が遅延し、会社の業績悪化や親族間の関係悪化を招きかねません。
愛憎劇を卒業!円滑なファミリービジネス継承を実現する6つのステップ
では、ファミリービジネスの事業承継を成功させるためには、具体的にどのような対策を講じれば良いのでしょうか?
「うちはまだ大丈夫」と先延ばしにせず、今からできることを始めましょう。
ステップ1. 腹を割って話そう! 家族会議のススメ
事業承継は、経営者や後継者だけの問題ではありません。
家族全員が当事者意識を持ち、誰が、いつ、どのように事業を承継するのか、腹を割って話し合うことが重要です。
- ポイント1: 定期的な家族会議の開催
- 少なくとも年に一度は、事業承継をテーマにした家族会議を開催しましょう
- 後継者の選定、承継時期、経営方針、財産分与など、重要なテーマを議題に設定
- 専門家(弁護士、税理士、事業承継コンサルタントなど)を交えて、客観的な視点を取り入れることも有効
- ポイント2: 後継者候補との対話
- 後継者候補の希望や考え方をじっくりと聞き、本人の意思を尊重することが大切
- 社外で活躍している場合でも、事業承継の可能性について、率直に話し合ってみましょう
- 事例紹介:
創業50年の老舗和菓子店では、毎年、家族旅行を兼ねて家族会議を開催。後継者である息子が中心となり、事業承継計画を作成。事業承継の進捗状況や課題を共有することで、家族全員が安心して事業承継を進められるように。
ステップ2. 後継者を育てる、事業承継の準備期間
後継者は、一朝一夕に育つものではありません。
経営者としてのスキルや知識、経験を積み重ね、周囲からの信頼を得られるよう、時間をかけて育成していくことが大切です。
- ポイント1: 社内でのOJT
- 現場での経験を通して、会社の業務内容や顧客との接し方を学ぶ
- 各部署の責任者のもとで、計画立案や部下育成など、実践的なスキルを身につける
- ポイント2: 社外研修やセミナーへの参加
- 経営学、財務会計、マーケティングなど、経営者として必要な知識を習得
- 同業他社の経営者との交流を通して、視野を広げ、刺激を受ける
- ポイント3: MBA取得や海外留学
- 時間的・経済的な余裕があれば、経営学修士号(MBA)の取得や海外留学も視野に入れる
- グローバルな視点や高度な経営知識を身につけることができる
- 失敗談:
後継者である息子に経営の知識や経験がないまま、社長の座を譲ってしまった結果、社内は混乱し、業績は急激に悪化。結局、会社は倒産に追い込まれてしまった。
ステップ3. 「うちのやり方」を見直すチャンス! 事業承継計画書の作成
事業承継計画書は、会社の現状分析、経営方針、後継者育成計画などを具体的にまとめた、事業承継の羅針盤となるものです。
- ポイント1: 事業の棚卸し
- 顧客ターゲット、商品・サービス、競合分析など、自社の強みと弱みを分析
- 時代の変化に合わせて、事業の再構築や新たなビジネスモデルの構築も検討する
- ポイント2: 後継者育成計画の具体化
- いつまでに、どのようなスキルや知識を習得させるか、具体的な計画を立てる
- 社内研修、外部セミナー、OJTなど、効果的な育成方法を組み合わせる
- ポイント3: 専門家の活用
- 税理士、弁護士、事業承継コンサルタントなど、専門家のサポートを受ける
- 事業承継に関する法務、税務、財務など、専門的なアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑える
- 事業承継計画書に盛り込むべき内容例:
- 経営理念、ビジョン、経営方針
- 会社概要、事業内容、沿革
- 財務状況、経営指標
- 市場分析、競合分析
- 後継者候補の選定基準、育成計画
- 株式の承継方法、承継時期
- 事業承継後の経営体制
ステップ4. 「親の心子知らず」を防ぐ、コミュニケーションのススメ
ファミリービジネスでは、とかく経営者と後継者、親族間でコミュニケーション不足に陥りがちです。
- ポイント1: 報告・連絡・相談の徹底
- 日頃から、会社の状況や事業承継に関する情報を共有する
- 後継者は、自分の考えや悩みを積極的に経営者に相談する
- ポイント2: 定期的な個別面談
- 少なくとも月に一度は、経営者と後継者が個別に面談する時間を設ける
- 業務の進捗状況や課題、事業承継に関する考えなどを共有する
- ポイント3: 風通しの良い組織文化
- 社員が自由に意見交換できる環境を作る
- 後継者は、社員とのコミュニケーションを通して、現場の声を聴き、信頼関係を築く
- 失敗談:
創業社長は、長男に事業を継がせるつもりだったが、長男の気持ちを確認せずに事業承継を進めた結果、長男は反発し、家出。親子関係は修復不可能なほど悪化し、会社も後継者不在に陥ってしまった。
ステップ5. 「情」だけで判断しない! 客観的な評価と公正な処遇
ファミリービジネスでは、「身内だから」という理由で、後継者を甘やかしがちです。
しかし、それは後継者の成長を阻害し、社員からの反感を買うことにもなりかねません。
- ポイント1: 客観的な評価基準
- 後継者の評価は、実績と能力に基づいて、明確な基準とプロセスで実施
- 感情に流されず、公正な評価を心掛ける
- ポイント2: 適切な報酬と責任
- 後継者であっても、社員と同様、仕事に見合った報酬と責任を与える
- 甘い待遇は、社員のモチベーション低下や組織全体の不公平感を招く
- トラブル事例:
後継者である娘婿に、経営の実績や能力に見合わない高額な報酬を支払っていたため、他の社員から「不公平だ」と反感を買ってしまった。結果、優秀な社員が会社を辞めてしまい、会社全体の士気が低下。
ステップ6. 外部の力を借りて、スムーズな事業承継を実現!
事業承継は、経営者や後継者だけで解決できる問題ではありません。
弁護士、税理士、事業承継コンサルタントなど、専門家の力を借りることで、スムーズな事業承継が可能になり、思わぬトラブルを防ぐことができます。
- 弁護士
- 事業承継に関する法令や契約書の作成、相続対策、親族間の紛争予防
- 税理士
- 事業承継時の税務対策、相続税対策、事業計画の策定支援
- 事業承継コンサルタント
- 事業承継計画の策定支援、後継者育成、事業承継後の経営サポート、中立な立場からのアドバイス
- 外部の専門家を活用するメリット
- 専門知識に基づいたアドバイスを受けられる
- 客観的な視点から問題点や課題を指摘してもらえる
- 感情的な対立を避けて、冷静な議論を進めることができる
事業承継に関する無料相談会やセミナーなども積極的に活用してみましょう。
まとめ:円滑な事業承継は、企業の未来と家族の幸せを守る
ファミリービジネスの事業承継は、企業の存続と発展、そして家族の幸せを守るために、避けては通れない課題です。
「まだ大丈夫」「そのうち考えよう」と先延ばしにせず、早めの準備と計画的な取り組みが、成功の鍵となります。
今回の記事を参考に、ぜひ、家族全員で事業承継について話し合い、専門家のサポートも得ながら、円満な事業承継を実現してください。
事業承継に関するお悩みは、ぜひ専門家にご相談ください。